Vol.2 エスプレッソの魅力と砂糖の重要性 |
エスプレッソに砂糖、そして今一度、このカフェの魅力を更に深く、そして熱く検証していきましょう。
それでは早速、始めましょう。
え~、その前に、イタリアではあの小さなデミタスカップに入っているエスプレッソと言う飲み物に、こだわりを持っている人がどれほど多いかご存知ですか?
それぞれ“ミオ・バール”(私のバール)を決めていて、他ではめったに飲みません。
その、自分のお気に入りのバールを探すのに、何ヶ月もいろんなバールを巡り、自分好みのカフェか?気が合うバリスタか?店の雰囲気や客層はどうか?などと色々吟味してから店を決める人も少なくありません。それほどにイタリア人にとってカフェは重要なんです。
「たかがコーヒー一杯にそこまでするかね?」と、思うでしょうが、イタリア人はするんです。
話がすぐに脱線してしまうので、まずイタリアではエスプレッソに砂糖を入れずに、いわゆるブラックで飲む人は、ほとんどいません。
その訳は、エスプレッソは抽出された時点では未完成の絵と同じ状態なのです。
そこに最後の一筆を入れて完成させるのは、お客自身なのです。その一筆がエスプレッソではスプーン一杯の砂糖に当たる訳です。
これを加えることによって、コーヒー本来の旨味を殺さず、深みとまろやかさを、よりいっそう引き出すことが出来、アロマを際立たせるのです。
料理に塩加減があるように、エスプレッソにも砂糖の加減があります。
砂糖入れ方一つで、自分だけのエスプレッソを完成させる作業をして頂く訳です。
例えば、イタリアでは人により千差万別ですが、あのデミタスカップに砂糖を3,4杯入れて飲む人や、1,2杯入れても混ぜる人、混ぜずに飲んで最後にスプーンで砂糖をすくって食べる人、しっかり混ぜる人、半分だけ溶かす人と、人によって本当に様々です。
どうですか、そう考えるとたかが砂糖と、あなどれないでしょう?
ここまでエスプレッソにこだわる訳は、エスプレッソは全てのイタリアン・カフェの基本ベースとなるからです。皆さんもご存知のカプチーノやカフェ・ラテにしても、その基本となるエスプレッソが良くなければ美味しくありません。
バリスタにとってエスプレッソの抽出は一番大切な作業で、毎朝その日の天候や気温・湿度などを見て、豆の挽き方や粉をプレスする加減を調節します。また、一日のうちでも時間帯やその時の状況により何度か調整を行い、朝・昼・夕で味のブレがないように気を配っています。
極端な話ですが、マシンの設定を春の爽やかな日のままで、夏の暑い湿気の多い日と、冬の寒い乾燥した日に使用したとすれば春は美味しいが、他の季節はまずいカフェを飲まされる事になります。 そのような事が無いように、バリスタは一年を通じて常に一定の味のエスプレッソを提供するように日々心掛けています。(少なくともこれは基本です)
これらのことを踏まえた上で、バリスタはさらにお客様の細かなリクエストにも答えたいという気持ちがあり、例えばその日の体調や気分に応じて今日は少し強めにとか、心持ち弱くして量を多めになど各個人の注文を頂くことが最高の気分なのです。
何故かと言うと、それだけそのバリスタの技量が、お客様に信頼されている証拠ですから。
また、それらのリクエストに瞬時に答えることが出来るのが半手動マシン抽出の利点であり、魅力でもあるのです。
例えばエスプレッソに少しだけミルクを入れる“カフェ・マッキャート”にしても、「熱いミルクを多めに!」とか、「ミルクの泡だけを盛り上げて欲しい!」とか、「冷たいミルクを!」など、同じカフェでも様々。それだけコーヒーにこだわりと主張を持っている証拠です。
どうしてそこまでこだわるのかイタリア人に聞いたら、きっとこう言うでしょう。
「そんなの当たり前だろ!カフェを飲むんだぞ!」と、まあこんな感じでしょう。
しかし日本で上記のような注文をすると、たとえ半手動のマシンを使っていても店員に奇異な目で見られたり、煙たがられたりするでしょう。 仮に、それらの注文が出来たとしても、自分が満足するものが出てくる可能性もまた、低いでしょう。
でもこうして注文が出来る店が増えれば、楽しみも広がり、本物のコーヒー文化が栄えると思います。 毎回店から出されるコーヒーをただ飲むだけでは面白くない、ダメもとで注文するのも、たまにはいいかもしれません。
ただこの場合、我々バリスタの技量が一番、問われるのですが・・・。
最後に、ここまで2部に亘り私の好き勝手、言いたい放題にお付き合い頂き、お礼申し上げます。
では、良いカフェを!
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